企業TOPインタビュー

自社データセンターをコアとしたクラウドサービスで顧客とグループに貢献。

正興ITソリューション株式会社
代表取締役社長 有江 勝利

更新日:2024年7月31日

1963年 福岡県出身
1985年4月 株式会社正興電機製作所 入社
2005年3月 正興ITソリューション株式会社株式会社 取締役ソリューションサービス部長
2006年1月 株式会社株式会社正興電機製作所 執行役員 ITソリューション事業部長
2006年1月 正興ITソリューション株式会社株式会社 代表取締役社長(現任)
2010年3月 株式会社株式会社正興電機製作所 取締役上級執行役員 ITソリューション事業部長
2013年4月 株式会社正興電機製作所 取締役上級執行役員 情報部門長
2019年3月 株式会社正興電機製作所 常務執行役員 情報部門長(現任)
2024年4月 株式会社正興電機製作所 取締役常務執行役員 事業統括本部長(現任)
※所属や役職、記事内の内容は取材時点のものです。

はじまりは日立製作所への技術者派遣。

当社の設立は2005年ですが、その起源は1985年に親会社である正興電機製作所が社外向け事業としてビジネスアプリケーションシステムの受託開発を開始したことに遡ります。

当時は大企業中心に活用されていた大型汎用機の時代から、1人1台のパソコンへと移行するダウンサイジングの時代を迎えていました。それまで正興電機はハードウェア中心の会社でしたが、これからはソフトウェアの時代だと考えた当時の経営陣が方向性を示し、新しい事業を立ち上げるための人材を集めました。

私自身が1985年に入社した事業立ち上げの一期生です。社内にソフトウェア事業に詳しい人材が不足しており、電算室(情報システム部門)はありましたが、ソフトウェアの外販事業となると思想や価値観も大きく異なります。そのためゼロから事業を立ち上げるための人材を募ったのです。

当時、グループで50名程度の新卒採用者のうち20名が情報事業に従事することになります。もちろん私たちもソフトウェアについてほとんど知識がなかったので、入社直後から2年の計画で日立製作所のソフトウェア工場に派遣されました。

当時は東京まで新幹線で6時間以上かかった時代です。土曜日の朝早い便に乗り込み、立ち上げメンバー20名で東京に向かいました。そこが情報事業の始まりでした。

業界シェアトップクラスのクラウドサービスに成長。

日立製作所でソフトウェア開発を学んだメンバーが福岡に戻り、地場の企業を中心に様々なシステム開発案件を引き受けました。そして、電力、制御、社会システム、ビジネスソリューションなど、顧客やニーズに応じた組織を形成しながらSI事業を拡大させていきました。

大きな転機になったのが1997年に博多港ふ頭から受注した港湾業務システムです。博多港には以前から大手SIerが開発した基幹系システムが導入されており、当時は私たちが入り込む余地はありませんでした。

しかし、博多港のコンテナ取扱量の増大により現システムでのオペレーション対応が難しくなり、より高度なシステム提案を求められました。この提案依頼に対して情報システム事業部が手を挙げ、受注を勝ち取ることができました。

ただし、そこからが苦労の連続でした。国際物流には税関を監督する財務省と物流を監督する国土交通省(港湾局)の両方が関係しており、そこをうまく調整する必要があります。業務自体も独特かつ複雑で、システムを完成させるまでに2年を要しました。しかし、そこで得た経験こそが今日の当社の基盤となっています。

この港湾分野の業務系クラウドサービス「PORT-IT Systems」は、北は北海道の釧路港から南は沖縄県の那覇港まで、現在では全国で約70社の港湾物流会社に採用され、当社事業の重要な柱となっています。

港湾物流業界の国際競争力向上に貢献。

このプロジェクトによって港湾物流業界の現場理解を深めた私たちは、業界の生産性および国際競争力の向上に貢献するため、クラウドサービスの提案だけでなく、さまざまな取り組みを行っています。その一つが、国土交通省が推進している「サイバーポート」の現場への実装支援です。

サイバーポートとは、紙、電話、メールなどで行われている港湾関係事業者間の手続きをペーパーレス化し、業務の効率化と生産性向上を図るために国土交通省が構築した港湾関連データ連携基盤です。

このプラットフォームは非常に効果的であり、導入によって確実に生産性を向上できます。しかし、どれだけ優れたシステムであっても、現場の課題を理解し、各現場に丁寧に説明を行わなければ普及率は上がりません。想像に難くないと思いますが、現場は紙での運用に慣れた方々が多く、現状はそれで業務が回っています。

これまでのやり方を大きく変えるとなると抵抗が大きいですが、日本の港湾物流業界の国際競争力を上げていくためには必要なことです。そして、現場の方々を納得させられるのはクラウドサービスの開発と導入で現場理解を深めた私たちだけだと思うのです。

その他にも、AI(人工知能)を活用してコンテナターミナルのオペレーションを最適化する「AIターミナル」の展開。そして、港湾現場で働く方々の安全衛生面の向上、特に「港湾現場事故ゼロ」を実現するソリューションの開発と展開にも力を注いでいます。

元気な高齢化社会創りに貢献。

また、二つ目の柱に育てようとしているのが、健康・ヘルスケア領域です。正興電機グループは2018年より7年連続で健康経営優良法人の認定を受けており、2023年度は経済産業省と東京証券取引所の共同による「健康経営銘柄」にも選定されました。

これまでにグループで実証できた健康経営活動をベースに、または地場大学との共同研究で創造した成果物をベースに、健康経営支援ソリューションを提供しています。その一つが、転倒による労働災害を防ぐアプリケーション「KOKEN」です。

転倒災害は労働者の加齢に伴う骨密度の低下などを背景に、特に中高年齢の女性の発生率が高く、転倒災害発生リスクの見える化が対策の一つと言われています。我々はその点に着目し、地場の大学とスマートフォン(内部の加速度センサー)を活用して歩き方などの解析を行う共同研究の成果からこのアプリケーションを開発しました。

その他にも様々なソリューションを提供していますが、それらを通して元気な高齢化社会創りに貢献していきたいと考えています。

ゼロイチで事業を生み出し、立ち上げていける醍醐味。

そして三つ目は、正興電機グループへの貢献です。近年、センシングやIoTによるデータ通信を活用した製造現場のDXが劇的に発展しました。古賀市に自社工場を持ち、100年近くにわたってものづくりをしている正興電機へのデジタル文化の定着、そして貢献は私たちの大きなテーマでありミッションです。

自社工場を持ち、様々な実証実験にフットワーク軽く取り組める点は利点ですし、現場とのコミュニケーションの中で課題を洗い出し、その解決に取り組んでいけることはエンジニアにとって大きなやりがいとなるはずです。港湾分野と同じように成功モデルを作り、それを横展開することで事業を大きく成長させていきたいと考えています。

このように、社会そしてグループへの貢献をテーマに、正興電機という歴史と確かな技術を持つ土台の上で自社独自の事業を展開していけるところが当社の魅力ではないかと思います。

その意味では、2025年で会社設立から20年を迎えますが、今でも社内ITベンチャーという立ち位置です。ゼロイチで事業を生み出していく面白さがありますし、これから入ってこられる方々も自分で事業を企画し、その立ち上げを担うこともできます。

社会課題の解決を念頭に置きながら、スケールするビジネスモデルを考えられる人、プロジェクトマネジメントができる人など、当社でその経験を存分に発揮していただきたいと考えています。

編集後記

チーフコンサルタント
瀬川 泰明

電力の監視制御システムや変電用機器、配電用機器等の開発・製造を行う正興電機製作所がなぜ情報システム部門を別会社化しているのか。そして、なぜ港湾分野のクラウドサービスを展開しているのか。事業立ち上げの一期生である有江社長から詳しい経緯をお伺いでき、私自身も非常に理解が深まりました。

経営者として会社を成長させなければいけないプレッシャーも大きいと思いますが、インタビューの中で有江社長は何度も「貢献」というキーワードを口にされていたのがとても印象的でした。

終始、穏やかな口調で語る有江社長の実直さ、そして顧客への熱い想いが伝わってくると同時に、そんな有江社長のもと、真に顧客に喜ばれる新しいサービスを生み出していける魅力的な環境であると感じました。

企業TOPインタビュー一覧

ページトップへ戻る