新たな本社屋から始まる、西鉄のまちづくりと人財のこれから。
西日本鉄道株式会社
執行役員 人事部担当 人事部長 吉田 哲治
1969年、福岡県出身。1992年に西日本鉄道株式会社へ入社。西鉄バス北九州株式会社への出向を経て2008年に帰任。以降、人事部労務課課長、国際物流事業本部業務部総務課課長(次長待遇)、東京事務所所長(部長待遇)などを歴任。2019年4月には事業創造本部ICカード事業部長(株式会社ニモカ代表取締役社長を兼務)、2020年4月より人事部長に就任。2025年4月には執行役員 人事部担当 人事部長に就任し、現在に至る。
※所属や役職、記事内の内容は取材時点のものです。
「ONE FUKUOKA BLDG.」への本社移転がもたらした新しい日常。
西日本鉄道株式会社(以下「西鉄」)は2025年5月、福岡の街の顔として誕生した「ONE FUKUOKA BLDG.(以下、ONEビル)」へ本社を移転しました。
これによりオフィス環境も一新。最大の変化は、ABW(Activity Based Working)の導入です。社員は、その時々の仕事内容や気分に合わせて、働く場所を自由に選択する働き方になりました。
新オフィスは、「X Terminal(クロスターミナル)-“ときめき”が交差するオフィス-」というコンセプトのもと、従来は8フロアに分散していた職場を、10階のワンフロアと9階のハーフフロアに集約。約700人が一堂に会し、部門を超えて隣り合いながら働くスタイルへと進化しました。
これにより、社員同士が顔を合わせて会話すう機会が格段に増え、社内交流の活性化を強く実感しています。
ONEビル自体が「創造交差点」というコンセプトを掲げ、多様な価値観が混じり合って新しい価値を生み出し続ける場所を目指しており、その効果が社内でもまさに生まれ始めていると感じています。
部門を超えた交流で広がる社内ネットワーク。
移転後は部門間のやり取りが一層活発になりました。現在は、グループ会社の社員も自由に利用できる交流エリアが設けられており、そこでは部門の異なる社員同士が一緒にランチを楽しむ光景も見られます。
こうした場での偶発的な出会いやコミュニケーションが、新しいビジネスのきっかけにつながる可能性を秘めていると感じています。社外やグループ会社の来訪者から「ここで働きたい」と言われることも多く、職場環境の魅力をあらためて実感しています。
以前は部署ごとにフロアが分かれ、他部門と顔を合わせない日も珍しくありませんでしたが、そうした壁が取り払われたことで日常的な交流が自然に生まれ、社員の意識や働き方にも良い影響をもたらしています。
「にしてつグループまち夢ビジョン2035」に向けた着実な歩み。
現在、西鉄では2022年に発表した長期ビジョン「にしてつグループまち夢ビジョン2035」に向けた取り組みを進めています。今年度は現行中期経営計画の最終年度にあたり、次の3年間の中期経営計画を策定するタイミングです。
2035年という長期目標から逆算し、マイルストーンを設定しながら、まずは基盤を固めていく段階にあります。ビジョンの方向性を社外に分かりやすく示すことを重視しています。
事業ごとに見ると、運輸事業はコロナ禍で数年にわたり落ち込みましたが、現在はようやくコロナ前の水準に近づき、随分回復してきたと実感しています。不動産事業では首都圏に加えて関西にも拠点を置き、活動エリアを拡大しています。
さらに海外開発事業でも、特定の国に注力しながら新たな候補地を模索中です。福岡で培ったノウハウを他のエリアに展開することで、その地域の発展に貢献したいと考えています。
こうした動きには、早くから海外展開してきた物流事業の影響も大きく、新しい国へ進出する際のハードルを下げるといった相乗効果が生まれていると感じています。
バス事業の強みを活かした次の展開。
運輸事業のなかで今後さらに成長の可能性を持つのが、西鉄の強みであるバス事業の延長線上にある取り組みです。
例えば、オンデマンド型のバス「のるーと」を他地域へ展開することや、既存のバスを電気バスに改造する「レトロフィットバス」事業などがあります。これらは西鉄が培ってきたノウハウを求める他地域の企業や自治体に提供できる分野です。
地方自治体はいま「地域交通をどう維持するか」という課題に直面しています。人口減少によって鉄道や路線バス、タクシーの維持が困難になった場合、西鉄のオンデマンドバスのシステムは有効な選択肢となります。
実際にそうした課題を抱える自治体からの視察も多く、現在は50以上の自治体や企業に導入いただいています。さらに、こうした導入実績が次の導入へとつながる好循環も生まれつつあります。
キャリア採用は広がりを模索する段階。
近年はキャリア採用の幅も広がり、アセットマネジメントの経験者やデジタル分野の人財など、これまで西鉄があまり手掛けてこなかった領域で即戦力を迎えるケースが増えてきました。
中には年収1,000万円を超える処遇でお迎えする例もあります。一方で、こうした新しい領域では、どのような人財が最も成果を発揮できるのかを見極めながら取り組みを進めている段階でもあります。
特定の人財だけを既存社員と大きく異なる条件で採用することには慎重さも必要です。特に首都圏の不動産人財など、弊社の事業基盤の大部分を占める福岡県をベースとした給与水準に比べて差がある分野では、新たな採用枠や仕組みづくりを検討しています。
また、U・Iターンで転職される方の中には「西鉄社員であること」にこだわりを持つ方も少なくありません。西鉄としてはその企業文化を大切にしつつ、より多様な人財を受け入れられる仕組みを模索する過渡期にあるといえます。
U・Iターン人財に広がる活躍の場。
これから福岡へのUターンやIターンを考える方々にとって、西鉄は大きな受け皿になれると自負しています。特に、九州・福岡出身でライフステージの変化を機に「地元に戻り、これまでの経験を地域に役立てたい」と考える方にとっては理想的な環境です。
西鉄の事業の中心は福岡・天神であり、今後も「地域のまちづくりに貢献する」という姿勢は変わりません。
転職者でも役付社員として活躍している実績があり、さらに本人の希望を反映できる仕組みとして、社内異動の希望申請やタレントマネジメントシステムを導入しています。
これにより社員は「どの部署にどんな人がいて、その人がどんなキャリアを歩んできたか」を把握できる“見える化”の仕組みを活用できるようになりました。
総合職として入社した場合に避けられない本人希望と実際の配置とのミスマッチを和らげ、自己実現の可能性を広げることを目指しています。
また、農業経営者として独立を目指す人財を育成するプロジェクトも展開しており、いちごやトマトなどの生産を手がけながら人財育成にも注力しています。
モビリティ、都市開発にとどまらず、商業、流通、さらには農業といった多彩な事業領域を有する西鉄だからこそ、U・Iターンをお考えの方がキャリアを活かせるフィールドは数多くあります。地域に根差しながら長く安心して働きたい方にとって、ここ福岡は新しいキャリアを描く舞台となるはずです。