株式会社西部技研
松川健司さん(仮名・生産技術) 35歳
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夫婦で一緒に暮らす、当たり前を実現。福岡企業で生産技術としてデータ活用に挑む。
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島根と福岡。夫婦でありながら、長く遠距離生活が続いていた配偶者と、「同じ場所で暮らしたい」という想いが次第に強まっていった松川さん。
前職への不満はなく、仕事にも環境にも恵まれていたものの、配偶者の「福岡勤務を続けたい」という希望や、両親を含めた家族の状況を踏まえ、福岡へのUターン転職を決断する。
しかし、福岡市近郊で自身の専門性を活かしつつ、希望条件をすべて満たす企業を探すことは簡単ではなかった。それでも「優先順位を明確にする」ことで選択肢を広げ、たどり着いたのが現在の職場だったという。
生産技術の立場からDX推進に取り組み、入社から1年足らずの今、前職で培った知識を活かしながら業務を進めている松川さんに、福岡への転職の背景と現在の仕事・生活について伺った。
※本記事の内容は、2025年12月取材時点の情報に基づき構成しています。
- 過去の
転職回数 - 1回
- 活動期間
- エントリーから内定まで82日間
転職前
- 業種
- 電子部品メーカー
- 職種
- 製造技術
- 業務内容
- 量産品の安定生産や不良率の改善、新工法の導入と社内展開など
転職後
- 業種
- 機械メーカー
- 職種
- 生産技術
- 業務内容
- 工場内のデータ集積やデータベース構築、ペーパーレス化などのDX推進
生活とキャリアの両方を見据え、福岡へのUターン転職を決断。
現在のお仕事はどんな内容ですか?
生産技術課で工場内のデータ関連業務を担当しています。設備から取得するデータをどのような構造でデータベース化するかを検討し、実際に整備していくことが主な役割です。
現場のメンバーから「このデータを取りたい」といった相談を受け、要件を整理したうえで、生産技術内の設備担当メンバーと連携し、必要なデータが上位システムへ正しく上がるよう調整しています。
また、作業開始・終了日時や検査結果など、これまで紙で記録していた情報のデジタル化も進めています。近いうちに紙による運用をなくす予定で、現在その準備を進めているところです。
データは取得するだけでは価値を生みません。使える形に整え、将来的には現場改善や生産性向上につながる分析にも活用していきたいと考えています。
入社前のご経歴を教えてください。
学生時代には金属材料の研究に取り組み、その知見を活かして製品開発に携わりたいと考えていました。
そして大学卒業後は東証一部(現:プライム市場)上場の製鋼メーカーに入社。しかし、入社3年を過ぎた頃に会社の方向性に対する疑問が大きくなり、転職を決意しました。
その後は、島根県にある大手電子部品メーカーのグループ企業へ入社。製造技術として量産品の安定生産や不良率の改善、新工法の導入と社内展開などを担当しました。
また、これら業務と並行して、BPRやDX、新規システム導入など、間接部門の業務効率化にも携わりました。
転職のきっかけは?
離れて暮らしていた妻と同居するためです。前職の仕事には不満はなく、環境としても恵まれていたと感じています。
ただ、大学時代からの交際相手である妻とは社会人になってからも長く遠距離生活が続き、結婚後も別々の土地で働き続けていました。夫婦としての生活を考えると、「いつかは拠点を揃えたい」という想いは以前からありました。
30代半ばになり、「この状態を今後も続けるのか」を現実的に考え始めたことが転機になりました。妻は仕事の関係で福岡を離れることができず、どちらかが仕事を辞めなければ一緒に住むことができない状況でした。
また、私の両親も妻の両親も福岡に住んでいるため、家族全体のことを考えると、私が福岡へ戻るほうが理想的だと感じました。転職理由は完全にプライベートな事情が中心でした。
転職活動はどのように進めましたか?
30歳の頃から転職サイトには登録していましたが、本格的に動き始めたのは34歳の頃です。「35歳が近づいてきた」と感じたことが、大きなきっかけになりました。
まず履歴書を見直し、日々届くスカウトメールの中から「福岡で働ける企業」を中心に確認し、条件が合いそうな企業へ返信していきました。転職活動の軸は一貫して「福岡で働けること」でした。
その中でリージョナルキャリア福岡のコンサルタント、瀬川さんからスカウトメールをいただき、地場企業に強い関心を持ったことから面談をお願いしました。
実際にお話しすると、私の希望を丁寧にヒアリングしてくれ、要望に沿った企業のみを厳選して紹介してもらえたのが非常に心強かったです。
また、企業紹介だけでなく、「その会社が今どんな取り組みをしているのか」「内部でどのような動きがあるのか」まで把握されており、その情報量と深さには驚かされました。レスポンスも非常に早く、安心して相談できる存在でした。
とはいえ、福岡はこれまでの経験を活かせそうなメーカー系の求人が少なく、さらに福岡市内近郊に絞ると選択肢は一段と狭くなるため、そこは正直かなり厳しかったですね。
今の会社に決めたポイントは?
第一に、福岡で働けることが大きかったです。そのうえで、西部技研に惹かれた理由は主に三つあります。
一つ目は、福岡本社であり地元で働き続けられる可能性が高いこと。二つ目は、売上が伸び続けている点です。環境関連の事業領域であることから、今後も成長の余地が大きいと感じました。
三つ目は、基礎研究の強さと競合の少なさです。ニッチな領域なので他社が容易に参入しにくいと考えました。
前職と比べると企業規模は小さいものの、コア技術に強みがあること、そして「技術に集中できる環境」である点に大きな魅力を感じ、最終的な決断につながりました。
生活基盤の安定を得つつ、データ活用の基盤づくりにじっくり向き合う。
転職していかがですか?
基本的には想像していたとおりです。コア技術が強く、ニッチな領域なので他社が簡単に真似できない点は当社の大きな強みだと感じています。
一方で、改善の余地があると感じる部分もあります。ただ、社内には主体的に行動する方が多く、会社としても変わろうとしている姿勢があります。
ルールや仕組みづくりを進めながら、今後は着実に改善されていくでしょう。
転職して良かったと思うことは?
まず、現在の仕事では大きな裁量を持たせてもらい、自由度高く取り組めている点が挙げられますが、何よりも「落ち着いて仕事ができること」が一番良かったと感じています。
前職では、自分のテーマ業務とライン不具合の対応業務が並行することが多く、いくつかの業務を中途半端な完成度で進めてしまうこともありました。
今の会社は突発的な対応に追われることが少なく、トラブル対応も自部門が入らずに完結できることから、自分のテーマに集中して取り組める時間を確保しやすいと感じています。
また、前職ではデータを扱う業務が中心だったのに対し、現在はデータを提供する業務も担当しており、未経験の分野に携われる点も大きなやりがいになっています。
困っていることや課題はありますか?
データベース構築を進めるなかで、今後の課題はデータの収集と活用だと考えています。
有用な分析を行うためには、必要なデータが欠損なく正確に収集されていることが前提です。また、それらのデータを正確に分析できる環境の整備も重要です。
まずは基礎となるデータ整備を着実に進めつつ、今後は社内全体のデータ収集・活用に関するリテラシー向上にも貢献していければと考えています。
生活面の変化はありましたか?
妻と一緒に暮らせるようになったことが、素直に一番良かったと感じています。島根にいた頃は寂しさもあったので、ようやく夫婦として同じ場所で生活できるようになったのは大きな変化です。
週末は妻と食材の買い出しをしたあと、糸島へ植物を見に行くのが定番となりました。引っ越しを機にインテリアとして始めた植物が、気づけばすっかり趣味になっています。
転職を考えている人にアドバイスをお願いします。
地方は求人が多くないため、あれもこれもと条件を求めすぎると選択肢が非常に狭くなると感じました。だからこそ、優先順位をはっきりさせることが大切です。
勤務地、仕事内容、企業規模などから「これだけは外せない」というポイントを最初に決めることで、活動の軸が固まります。
同時に、最初から条件を絞り込みすぎず、幅広く目を向けてみることも必要です。私自身、そうした姿勢で動いたことが、最終的に良い企業との出会いにつながったと感じています。