2022.05.18
企業寿命、事業承継・・・個人のキャリア観に変化を引き起こす3つの要因
リージョナルキャリア福岡のコンサルタント、植田です。福岡はもう春を通り越して夏の陽気です。今年も暑い夏になるんでしょうね。
さて今回は、個人のキャリア観について、キャリアコンサルタントとして最近感じていることを挙げてみたいと思います。
転職はした方が良い
私は2009年にリージョナルキャリアを立ち上げ、キャリアコンサルタントとして多くの方の転職をご支援してきましたが、従来、転職に対しては「しないで済むならしない方が良い」という考え方でした。
ところが最近では、「自身のキャリア観に照らし合わせて、良いと思えば転職はした方が良い」と思うようになりました。その背景には以下の3点があります。
それぞれ解説していきます。
企業寿命23年、職業寿命43年
テクノロジーの進化やビジネス環境の変化のスピードが加速し、またM&Aなど企業の統廃合が拡大する中で、企業寿命はどんどん短くなっています。東京商工リサーチによると、2021年に倒産した企業の平均寿命は『23.8年』でした。
"2021年に倒産した企業の平均寿命は23.8年(前年23.3年)で、3年ぶりに前年を上回った。(引用-2022.2.25 東京商工リサーチ)
産業別では、最長は製造業の36.3年(前年33.4年)、最短は金融・保険業(同22.0年)と情報通信業(同14.9年)の15.7年で、その差は20.6年だった。"
一方、個人に目を向けると、大卒22歳から働き始めて65歳まで働くと仮定すれば、職業寿命は『43年』。企業寿命の約2倍の長さです。もはや、個人の意思に関わらず、転職は"避けて通れない"可能性があることを早くから視野に入れておくのが賢明かもしれません。
昔は良い会社だったけど、今は・・・
企業が寿命を永らえたとしても、それが「良い会社」の根拠であるとは限りません。特に、経営者交代についてのニュースを見ていて思うのです。国内外の名だたる経営者は「創業者」であることが多く、強烈な個性とオーナーマインドを持っています。こうした企業の経営を引き継ぐのがいかに難しいことかと・・・。
これは都市部だけでなく地方企業においても同じことが言えます。創業者やオーナー経営者が率いてきた組織、築き上げてきたサービス、生み出してきた製品をさらにレベルアップさせながら続けるのには、かなり高いハードルが存在するのだと思います。そして気付けば、「社長が変わって、かつてのような良い会社ではなくなった」と評されるようなことに・・・。
経営者交代に限らず、環境変化が大きい中では、"良い会社であり続ける"ことの難易度はどんどん上がっています。もちろん「良い会社」の捉え方は人それぞれですが、少なくとも自分の軸で「良い会社じゃなくなった(そうなりそう)」と判断したときには、素早く次の一歩を踏み出さなければ、個人のキャリアにも"遅れ"が生じてしまう可能性があります。
変化に敏感に。絶えず時流をつかむ
会社の設立や資金調達、人材の獲得、情報発信など、企業経営に関する様々な選択肢はどんどん豊富になっています。一昔前までは、企業経営と言えば『何代にもわたって実績を積み重ね、その実績にもとづいて新たな顧客や事業を創出する。そして金融機関からの信頼を厚くしながら、事業規模を拡大していく』というのが一つの"王道"でした。
ところが現代ではどうでしょう。革新的なサービスや製品であれば、異業界からの参入であったり、それまでの実績がなくとも、垂直に事業が立ち上がります。投資家やVCから資金調達を行い、一気に事業規模を拡大していく会社も珍しくありません。しかも設立間もなくして・・・。
企業寿命が短くなる一方で、スピード感を持って高度な経営判断をしながら市場を勝ち抜いている(あるいはその可能性を秘めている)企業は増えています。つまり、個人としても、働く会社の選択肢が増えていると言えます。
そういった変化にアンテナを張り、絶えず時流をつかみながら、自身のキャリアプランに落とし込んでいくことがますます重要になっていると感じます。
価値観にもとづいた意思決定を
「良いと思えば転職はした方が良い」そう考える背景をお伝えしてきましたが、「自身のキャリア観に照らし合わせて」という前提があることを忘れてはいけません。何よりもまず大切なのは、しっかりとキャリア観、あるいは人生観といった『価値観』をクリアにすることです。
転職をお考えの方は、あらためて自身の価値観を見つめてみてください。自分がしようとしている転職は、ちゃんと価値観にマッチしているのか--その答えが出ないうちは、やはり転職は「しないで済むならしない方が良い」でしょう。
そして価値観は、結婚したり、子どもができたり、子どもが巣立ったり・・・そんなライフステージの変化によっても変わるものです。そのときごとに大切にしたい価値観を確認し、また家族にも理解を得ながら、仕事や暮らしについて意思決定していく、そんな時代なのだと思います。