2023.05.11
「シリコンアイランド」復活に向けて。九州で加速する半導体関連企業の大型投資。
リージョナルキャリア福岡のコンサルタント、瀬川です。本日は九州で盛り上がりをみせる半導体関連について。
台湾の半導体大手・TSMCとソニーグループ、デンソーの合弁会社「ジャパン・アドバンスト・セミコンダクター・マニュファクチャリング(JASM)」が熊本県菊陽町に投資総額1兆円超とも言われる新工場を建設中ですが、その他にも、九州で半導体関連企業の新工場建設や能力の増強に向けた大型投資決定・検討、そして稼働開始のニュースが相次いでいます。
生産年齢人口の減少にともなう労働力不足や先端技術を担う高度人材の育成など、中長期的な課題をいかにクリアしていくかが重要ですが、直近の盛り上がりから"シリコンアイランド九州"の復活を強く感じているところです。
九州における半導体関連企業の主な動き
|ソニーグループ
数千億円を投じ、熊本県内にスマートフォン向け画像センサーの新工場建設を検討。2025年度以降に稼働予定。
|ローム(ローム・アポロ)
福岡県筑後市でSiC(炭化ケイ素)パワー半導体専用の新工場を稼働。2026年3月期までに従来計画の3倍に当たる最大1,700億円を投じる。
|京セラ
2028年度までに約620億円を投じ、長崎県諫早市に半導体製造装置向けのファインセラミック部品や半導体パッケージなどの新工場を建設。
|三菱電機(パワーデバイス製作所)
・パワーデバイス事業における2021年度から2025年度までの累計設備投資を従来計画から倍増、約2,600億円を投資。
・熊本県菊池市に新工場棟を建設し、SiCパワー半導体の生産体制を強化。2026年4月に稼働予定。
・45億円を投じ、福岡市西区にあるパワーデバイス製作所に開発試作棟を建設。また、同拠点に新工場棟を建設し、組み立てや検査(後工程)の体制を強化。
投資が続く「前工程」、今後は「後工程」も活性化の見通し
JASMの投資総額が桁違いなのでインパクトが薄れてしまいがちですが、数百億~数千億円規模の投資というのは地方においては相当なインパクトです。
また半導体生産において、シリコンウェハ上に電子回路を形成する工程(いわゆる前工程)では、ウェハに付着した化学物質などの洗浄のため大量の水(純水)が必要となります。その水資源が豊富であることや広大な敷地・拡張性などの面から、前工程の設備投資では熊本のプレゼンスが高いことが窺えます。
<参考:半導体のできるまで(出典/日本半導体製造装置協会HP)>
国際半導体製造装置材料協会(SEMI)の発表によると2022年の世界の半導体製造装置の販売額は約16兆8,000億円で、そのうちの後工程の比率は約15%。80%以上を前工程が占めるということからも、半導体製造において前工程の投資額が圧倒的に大きいことがわかります。
とは言え、前工程の技術進化の停滞に伴い、後工程領域の技術開発が注目されていますので、また今後の投資領域や投資エリアにも動きが出てくるかもしれませんね。