異業界出身者が銀行の未来を変える。
ふくおかフィナンシャルグループ(株式会社福岡銀行)
前ビジネス開発部 部長 平田 慶介
北九州市出身。1989年早稲田大学卒業。3カ店の支店勤務の後、法人営業を経験。事業再生、M&Aに10年携わった後に現在のビジネス開発部 部長に就任。
※所属・役職等は取材時点のものです。
デジタル化の波。いま、地方銀行で起きていること。
まず、銀行全体に言えることですが、今後数年のデジタル化によって銀行業務に携わる人数は激減していくと言われています。これは、程度の差こそあれ、メガバンクも地方銀行も同じだと捉えています。ITの発達によって、ほかの産業では先に起きた出来事が、ついに金融業界にも押し寄せてきたということなのでしょう。
よく、「銀行はシステム装置産業」と言われていますが、実態は「労働集約産業」です。金融の場合は、これまで現金をベースに事業が構成されていましたので、保管場所、管理する人間も多く必要でした。それが電子決済ベースに変わるということだけでも、その数が大幅に減り、とても大きなインパクトになります。
また、これまでは銀行のライバルは銀行と言ってもいいぐらい、専業化が進んでいました。しかし、かつて銀行の専業であった決済ひとつとっても、多くのサービスが世の中に存在しています。最近では、電車に乗る時に切符を購入したりする人も、コンビニで買物をするときに現金を使う人も随分と減ったのではないでしょうか。こういった現状が示すように、これからの銀行業にとってのライバルは、ありとあらゆる業界の企業ということになります。これが銀行が置かれている状況なのです。
福岡銀行の事業戦略とは。
そういった環境の中で福岡銀行が取り組んでいるのは、徹底的に、個人向け領域のサービスを強化していくことです。それも、従来であれば、同業と勝負をしながら磨いていくところですが、先程もお話しした通り、今は銀行ではないところが主な競争相手となっています。
例えばですが、交通系のカードなどとも、どう共存するか、どう競争していくかということを考え、個人ユーザーの方々にとって何が一番いい形なのかを追求していかなければなりません。反省の気持ちも込めてお話ししますと、これまではこういった視点が欠けていたと思います。これからフィンテックを推進していくわけですが、何のためにそれを進めるのか、多くのサービスをWebで提供するのは何のためなのか、この視点を忘れないようにしたいと思っています。
戦略実現のキーは『異業界出身』の人材。
今から10年ほど前に、外部から人材を多く迎え入れたことがありました。当時は投資信託や保険の販売を強化する必要があり、社内には経験・スキルを持った人材がいなかったため、そういった業界から多く採用しました。また、金融業の一環として、財務コンサルティング、事業再生、証券業務、投資銀行業務を強化していく上で、メガバンクなどからの転職者が業界の先端の経験を持ち込んでくれました。このように、これまでの中途採用は細かな分野は違えど、ほとんどが金融業務に関するものでした。分野ごとのノウハウは蓄積してきた一方、銀行は非常に規制が厳しいこともあり、新しい事業を外からの力を使って加速させた経験は少ないのです。そういう意味では、全く異業界からの人材を中心に採用を考えている今回の取り組みは、私たちにとって大きなチャレンジです。
ただ、これまでの中途採用の経験の中にも、これから引き続き活かせるポイントがあると感じています。それは、今まで入社を考えてくれた人たちは、企業や仕事、キャリアだけでなく、比較的、九州、福岡との縁がある人が多いということ。あるいは、縁がなくてもこの地域が好きで、ここで仕事をし生活する、ということを重視してくれる人がほとんどなのです。もちろん、人材を採用するときに経験やスキルは必要ですが、この部分はこれからも変わらないと考えています。
『ふくぎん、おもしろいやん』と感じてもらいたい。
一般的なイメージとして、銀行は“堅い”と感じる人が多いと思います。たしかにそういった面もあるのですが(笑)、最近では様々な取り組みを通じて、従来とは異なる印象を持っていただけることも増えてきました。その一つが『iBankマーケティング』の設立です。通常、銀行がITサービス企業を設立するとなれば、オフィスを銀行内に設置し、そこで働く人達も全てが銀行員となることが多いのです。しかし、iBankはそうはしませんでした。オフィスはふくおかフィナンシャルグループの本部とも、福岡銀行の本店とも違う場所にあり、そこで働くの多くの人は、中途で採用した異業界経験者です。
なぜこのような形態を取ったかというと『銀行員が銀行員の目線でサービスを作っていくと、世の中のニーズとずれていく』と思ったからです。このiBankには、2018年4月にグループ外の沖縄銀行の資本参加も決まっており、今後もグループ内外を問わず、多くの地方銀行の参加を期待しています。こういった取り組みを通じて、多くの人に使っていただけるサービスを育てていくとともに『ふくぎん、おもしろいやん』と感じていただけるよう、引き続き頑張っていきたいと思います。