2026.07.07
なぜ日本人は「Uターンしたい」と思うのか 【キャリアコンサルタントのお役立ちコラム】
リージョナルキャリア福岡のコンサルタント、瀬川です。
Uターン転職を考える理由は、仕事や年収だけではありません。転職相談では「親の近くで暮らしたい」「自分が育った環境で子育てがしたい」「地元とのつながりを取り戻したい」など、キャリアと暮らしの両面から、Uターンを考える方が多くいらっしゃいます。
この記事では、日本で「Uターン」という考え方が広く定着した背景を、転職支援の現場から考えます。
転職活動やご自身のキャリアをお考えになる際のご参考にしていただければ幸いです。
※ この記事はリージョナルキャリア福岡のメルマガに掲載されたものです。転載にあたり、一部修正を加えています。
なぜ「Uターンしたい」と思うのか
目次

Uターン転職で見えてくる帰郷意識。
Uターンをお考えの方に「なぜ地元へ戻りたいのですか?」という質問をすると返ってくる答えは、「親の近くで暮らしたい」「子育ては自然の多い場所でしたい」「地元の友人がいるから」「子どもにも自分と同じ環境で育ってほしい」など実にさまざまです。
「年収を上げたい」「より大きな仕事がしたい」といったキャリアの話だけでは説明できない方も少なくありません。
転職相談の現場では、この「地元へ戻りたい」という感覚に、仕事の条件だけではない背景があると感じることがあります。
海外にも「故郷へ戻る人」はいる。しかし日本では「Uターン」と呼ばれてきた。
もちろん海外にも故郷へ戻る人はいます。
アメリカでは「Boomerang Migration(ブーメラン移住)」と呼ばれ、またヨーロッパでも都市部から地方へ移る動きが語られることがあります。
その背景には、住宅価格や生活費、リモートワーク、子育て環境など、さまざまな理由があります。
「仕事は東京、いつかは地元へ戻りたい。」
日本では、このような価値観が「Uターン」という言葉とともに語られてきました。
では、なぜ私たちはこれほど「帰郷」を意識するのでしょうか。
日本には「家(いえ)」という文化があった
その背景の一つとして考えられるのが、日本にも残る「家(いえ)」という考え方です。
家制度では、家は単なる住まいではなく、代々受け継ぐ存在でした。
家名を守る。 先祖の墓を守る。 田畑や土地を受け継ぐ。 長男が家を継ぐ。
こうした価値観は制度としては戦後になくなりましたが、人々の意識には今も少なからず残っているのではないでしょうか。
そのため、「親が高齢になったから帰ろう」「実家の近くで暮らしたい」という考え方は、単なる経済合理性だけでは説明しにくいものです。
Uターン転職のご相談でも、地元は「自分が属する場所」として語られることがあります。
東京という都市もまた、世界的には特殊な存在
もう一つ見逃せないのが、東京という都市の特殊性です。
東京は世界でも有数の巨大都市であり、仕事、大学、本社機能、情報、文化などが極めて高いレベルで集中しています。
地方で育った若者の多くが、一度は東京へ向かう。
これは日本では自然なキャリアの一つですが、都市部への集中は地方からのUターンを考える背景にもなっています。
しかし、その一方で東京には、
- ・住宅価格が高い
- ・住居が狭い
- ・通勤時間が長い
- ・子どもが自然の中で遊ぶ機会が少ない
- ・常に時間に追われる生活
という側面もあります。
若いうちは刺激的だった都会暮らしも、結婚や子育てを経験すると、「本当にこのままでいいのだろうか」と考え始める人は少なくありません。
人は「原風景」に帰りたくなる
転職相談を受けていると、ある共通点があります。
「子どもを、自分が育ったような環境で育てたい。」
この言葉です。
川で遊んだ記憶。 山や海が身近だった生活。 近所のおじさん、おばさんに見守られながら育った幼少期。
こうした「原風景」は、単なる思い出ではありません。
転職や転居を考える節目に、自分が安心できた場所や価値観に立ち返りたくなることがあります。
だからこそ、Uターンは「昔に戻る」ことではなく、「自分らしい暮らしを取り戻す」という選択なのかもしれません。
Uターンはキャリアだけでは説明できない
転職市場では、年収やポジション、仕事内容ばかりが注目されがちです。
もちろん、それらは大切な要素です。
しかし、Uターン転職では、それ以上に重要なのは「どこで、誰と、どんな人生を送りたいか」という問いです。
だからこそ、地方への転職は、条件だけを比較しても答えは出ません。
親との距離。 子どもの成長環境。 暮らしの豊かさ。 地域とのつながり。 そして、自分自身の原風景。
そうしたものすべてを含めて、自分らしい人生を選び直すこと。
それが、「Uターン」という選択の本質なのではないでしょうか。