すべては「お客さま」を起点に。営業戦略としてのデジタル化。
株式会社西日本シティ銀行
デジタル戦略部 部長 吉村 剛
1994年、岡山大学経済学部卒業後、株式会社西日本銀行(現西日本シティ銀行)に入行。
営業企画部にて新たな営業チャネルの企画等、企画業務に従事したのち、支店長を経て2020年4月より現職。
※所属や役職、記事内の内容は取材時点のものです。
「お客さまのためになるか?」常に基本に立ち返る。
まず私自身のプロフィールを紹介しますと、出身は福岡の北九州です。県外の大学を卒業後、Uターン就職で西日本銀行(当時)に入行しました。それから11年ほどは営業店で勤務し、その後本部の営業企画部(当時)で11年、再び営業店で支店長を2年務めたのち本部に戻り、2020年4月に創設されたデジタル戦略部に異動し現在に至ります。ちょうど今、現場13年・本部13年と半々ぐらいのキャリアとなっています。
デジタル戦略部には『イノベーション企画グループ』『デジタルバンキンググループ』『マーケティンググループ』があり、総勢80名弱が在籍しています。主に営業系の“デジタル戦略”を担っています。アプリなどの対顧客サービスや、営業店行員の業務プロセス、あるいは、マーケティングの分野など、常に起点になるのは『お客さま』です。お客さまに喜んでいただくために、いかにデジタル技術やデータを活用していくかという思想のもと、様々な取組みを推進しています。
例えばペーパーレス化や契約の電子化。従来は紙をベースにした業務フローになっていますので、お客さまにも多くの書類に記入やサインをしていただく必要があり、お客さまを訪問していた行員も、わざわざ書類を持ち帰って行内で決裁の印鑑をもらう、というプロセスが当たり前でした。それらをアプリやWebで行えるようにしたり、営業店行員が使用しているノートパソコンでできるようにすることで、個人・法人のお客さまは来店されることなく、行員も自身のタイミングでいつでも手続きができるようになります。他にも、顧客価値を起点に影響範囲や変化が大きい部分から優先的に進めています。
新しい価値をつくりだすことの大変さと、醍醐味。
それから、行内では勘定系システムや審査システム、コールセンターシステムなど様々な基幹システムが稼働していますが、その在り方についても様々な検討が加速しています。IT統括部という部署を中心に、SIerやベンダーなどの外部パートナー、グループ会社(NTTデータNCB)と連携しながら、オープン化やクラウド化といった将来を志向しています。
大型のシステム更改等についてはプロジェクトごとに複数の部署が関係しますし、外部パートナーも異なってきます。デジタル戦略部がそのプロジェクト全体のマネジメントを担うこともあります。システム更改にあたっては、前例や慣習を踏襲するのではなく、新しい価値をつくりだすことを目指しており、日々、その大変さと醍醐味を感じています。
私たち地方銀行にも、できることは、まだまだたくさんある。
デジタル戦略を推進しながら感じるのは、デジタルは必ずしも万能ではない、ということです。人にしか発揮できない価値、例えばこれまで人が築いてきたお客さまとの関係性は私たちの強みですし、これからも守り続けたいと考えています。そこにうまくデジタルを掛け合わせて新たなソリューションを提供していくこと、言わば「人×デジタル」「リレーション×ソリューション」といった融合が鍵になるのではないでしょうか。
近年を振り返れば、マイナス金利など厳しい事業環境が続く中で、コロナ禍に突入。行員は休日返上でお客さまのところに駆けつけ、資金繰りのお手伝いをさせていただくこともありました。そのとき行員一同が感じたのは、お客さまから声をかけていただけたことに対するありがたさと、それに応えなければならないという使命感でした。「私たち地方銀行も捨てたもんじゃない」とでも言いましょうか、人が持つ力をあらためて実感したのです。
この環境下においても、お客さまに喜んでいただくために、私たちができることはまだまだある。デジタル化によって顧客サービスや業務効率化等を進めつつ、一人ひとりのレベルを上げたり、領域を広げていくことができれば、当行ならではの未来は拓けると信じています。
昔ながらの“銀行らしさ”。良い部分もあれば悪い部分もある。
およそ80名の部門メンバーのうち、3割弱が中途入社です。その中には金融業界の経験がないメンバーも少なくありません。業界経験があるに越したことはないのかもしれませんが、中途採用に対しては「これまでの銀行の風土の中では育たなかったような人材を採用したい」という思いが強いため、異業界出身者は積極的に採用しています。一方で、中途入社の方は当社で何かをやりたい、成し遂げたいという思いを持って門を叩いてくれます。ですから入社後に「この会社に入って良かった」と感じていただきたいんです。そのためには、我々も変化していかないといけません。
銀行は往々にしてあまり変化を好まなかったり、“銀行の常識は社会の非常識”などと言われることもありますが、いつまでもそれは通用しない。顧客価値を起点として、積極的に新たなビジネスやサービスを考える、また、チャレンジする部内風土をつくる必要があると思っています。
「この会社に入って良かった」と感じられる組織にしたい。
今後、デジタル戦略部を中心に、あらゆる領域での採用強化を見据えています。ビジネス企画を始め、それをカタチにしていくためのデザイナー、プロジェクトマネージャー、作り込んでいくエンジニアといったポジションは”肝”になります。またWeb系でもプロデューサー、ディレクター、エンジニア、デザイナーが必要ですし、マーケティング系ですとデータサイエンティスト、データエンジニアなど、あらゆるポジションで採用の必要性を感じています。いずれにしてもキャリアを存分に発揮していただくことを念頭に、新たなマネジメントや評価制度を取り入れたり、専門職のコースを用意したりと、体制づくりも急ピッチで進んでいます。
振り返れば私も銀行一筋で30年近いキャリアになり、ポジティブとネガティブの両面で“銀行らしさ”を実感してきました。その中で、やりがいを感じることは決して少なくありませんでした。それはやっぱり、自分の仕事がお客さまのためになっている、お客さまに喜んでもらえていると感じられたときです。
最初にお話ししたように、今の時代もデジタル化といえど、お客さまを起点にするという根本は変わっていないと思いますし、むしろ、より重視されてきているのではないでしょうか。中途入社の方であっても、様々なバックグラウンドで培った経験やスキルを最大限発揮しながら、それがお客さまや地域の役に立っていると実感してもらいたい。そしてチームとして同じベクトルに向かっていきたい。そんな組織をつくっていくことが今の私の目標であり、やりがいです。