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FFGの安定基盤と広域ネットワークを武器に、地域発VCとして九州から世界へ挑む。

株式会社FFGベンチャービジネスパートナーズ
代表取締役社長 吉田 泰彦

更新日:2025年9月24日

1957年生まれ。1979年、一橋大学商学部を卒業し福岡銀行に入行。2009年に執行役員本店営業部長に就任。2011年には取締役常務執行役員、2012年にはふくおかフィナンシャルグループ取締役執行役員を歴任。2014年より福岡銀行取締役専務執行役員、2017年には取締役副頭取に就任。2019年にはふくおかフィナンシャルグループ取締役副社長を務め、2022年よりFFGベンチャービジネスパートナーズ代表取締役社長に就任し、現在に至る。
※所属や役職、記事内の内容は取材時点のものです。

FFGベンチャービジネスパートナーズ設立の背景。

FFGベンチャービジネスパートナーズ(以下FVP)は2016年に設立し、2017年から運用を開始しています。

2016年当時福岡県知事を退任されていた麻生渡氏(1995年~2011年県知事)は、九州・福岡で生まれた技術を社会に還元し、スタートアップとして事業化していくことに強い情熱を抱いていました。

しかし、当時の福岡には大学発スタートアップを育成する仕組み、いわゆる「エコシステム」が整っていませんでした。

麻生氏は自らその基盤づくりに動き、福岡銀行にもお声がけいただきました。私たちのグループも1990年代からスタートアップへの投資に取り組んでいたものの、十分な成果には至っていませんでした。

そこでこの要請を新たな挑戦と捉え、麻生氏の構想を支える会社として再出発することになりました。つまり私たちの原点は、「大学発のシーズをいかに事業化するか」というところにあります。

その後、麻生氏が立ち上げた「九州大学発ベンチャー振興協議会」の事務局を担うことになりました。これは大学の研究シーズと産業界を結びつけ、企業が大学に寄付を行い、その成果を産業化につなげる仕組みです。

その後、ふくおかフィナンシャルグループ(以下FFG)のiBankマーケティング株式会社の事業会社として設立した投資専門会社を再編し、現在のFVPへと発展していきました。

現在は大学発スタートアップの支援や投資にとどまらず、環境、宇宙、AIなど幅広い領域への投資を展開しています。

FFG傘下だからこそ実現できる、持続可能なスタートアップ支援。

私たちはFFGの100%子会社として、「スタートアップとともに未来を創り、我が国の新産業創出に貢献する」という投資理念を掲げ、総額500億円(2025年9月時点)を運用する九州最大のベンチャーキャピタル(VC)です。

FFGは10年間の長期戦略のなかで、重点取り組みの一つに「投資銀行ビジネスの強化」を掲げ、さらに「スタートアップ支援を通じた地域の新産業創出」という方針を打ち出しています。

私たちもこれに基づき、スタートアップへの投資を通じて地域経済に新しい価値の提供を目指しています。

こうした長期的な視点に立った取り組みを継続的かつ安定的に実行できる背景には、私たちが銀行グループ傘下であるという強みがあります。

安定的な資金供給はスタートアップ投資においてきわめて重要な要素です。これにより、スタートアップにとっても、私たちにとっても安心して挑戦できる環境を整えられると自負しています。

私たちは安定的な資金の出し手として、スタートアップから選ばれる存在でありたいと考えています。

キャピタリスト倍増とファンド拡大 ― 成長戦略のロードマップ。

私たちは現在、三つの大きなテーマに取り組んでいます。

一つ目は「投資体制の強化」です。キャピタリストの数を現在の10名から20名へと倍増させる計画を掲げています。そのために、VCならではの報酬や人事制度を整備し、独立系VCに引けを取らない体制を目指します。

二つ目は「九州の地理的優位性の活用」です。これまで先進的に取り組んできた大学発スタートアップのエコシステムや、TSMC進出による半導体産業の集積といった地域の強みを最大限に活かし、アジアの玄関口として全国から注目を集める存在を目指します。

三つ目は「FFGの総合力を活用した支援」です。FFGは九州を中心に約28万社もの法人ネットワークを有しており、このつながりを活かしてスタートアップと地域企業の接点創出を促進します。

将来的には社員数を50名前後に拡大し、ファンド規模もこれまで以上の規模への拡大を目指しています。地域発のVCとして、全国で確固たる地位を築きたいと考えています。

「安定したバックボーン × 広域ネットワーク」が生むシナジー。

繰り返しになりますが、私たちの最大の強みは、FFGという強力なバックボーンを持つことにあります。市況に左右されない安定的かつ長期的な投資が可能であるということは、スタートアップにとって大きな安心材料といえます。

また、九州最大規模となる取引先ネットワークを通じた営業支援も、他の金融機関には真似できない独自の価値です。

さらに、私たちの設立の原点が「大学発シーズの事業化」であることから、創薬や半導体といったディープテック分野に強い支援体制を持っています。

文部科学省の大学シーズ産業化プロジェクトに、民間企業として唯一事務局に参画していることも、私たちの専門性が評価された証だと考えています。

加えて、私たちが積極的に取り組んでいるのは、資金調達を主導する「リード投資」です。これはキャピタリストとして成長するうえで極めて重要な経験であり、他社ではなかなか得られない貴重な機会です。

現在のポートフォリオは約7割が東京を中心としている一方で、ディープテック分野は大学や研究機関の集積する九州が中心となっています。もちろん、有望であれば地域は問いません。

FVPだからこそできるチャレンジ。

「スタートアップとともに未来を創る」という投資理念を掲げ、日々活動している私たちには、「九州からユニコーン企業を生み出したい」という強い想いがあります。

例えば、久留米市のバイオ企業。国産ワクチン開発で注目を集めていますが、将来的にはがん治療薬で世界をリードする可能性を秘めています。そうした夢のある企業を一つでも多く育てていくことが、私たちの使命です。

ベンチャーキャピタルは「自分や起業家の信じる未来に投資をする仕事」です。

だからこそ、自分なりに興味のあるテーマを見つけ、未来に対する解像度を高め専門性を磨いていくことが、より良い投資につながると考えています。

そして、一人ひとりが専門性を持つことも大切です。だからこそ、多様な投資ができ、相乗効果を生み出します。そのため採用において、投資経験の有無は問いません。

また、ベンチャーキャピタルに対し「成果主義」や「個人主義」といったイメージを持たれる方もいらっしゃるかもしれません。しかし、FVPがしっかり処遇していきたいのは、組織やチームへの貢献ができる人です。

私たち自身もまだまだ「スタートアップ」だと捉えています。非連続な成長を目指す中で、決まった仕事はほとんどなく、自分で考え提案し行動できる人が向いていると感じます。

私たちの想いに共感し、福岡という土地を愛し、新しい産業をここから生み出したいという情熱を持った仲間とともに、未来を築いていきたいと考えています。

編集後記

コンサルタント
植田 将嗣

今回のインタビューでは、設立の経緯から現在に至るまでを包み隠さず丁寧にお話しいただき、その率直さにまず心を打たれました。表には出ない苦労や挑戦の積み重ねが、いまのFVP社を形づくっているのだと実感します。

また、27名という少人数ながら、一人ひとりが高い専門性を持ち、まさに少数精鋭の組織だと感じました。銀行系VCと聞くと堅い印象を抱きがちですが、実際に接してみると驚くほどフランクで、前向きな空気が心地良いチームでした。

安定基盤と広域ネットワークに加え、こうした風通しの良さがあるからこそ、九州から世界に挑むスタートアップと本気で伴走できるのだと思います。

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