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街の資産を守り、九州を動かす存在へ──パーパス経営で組織と未来を接続する。
株式会社福岡リアルティ
代表取締役社長 小原 千尚
1973年、千葉県生まれ。東京大学経済学部を卒業後、株式会社日本興業銀行(現:株式会社みずほ銀行)に入行。その後、2004年に株式会社福岡リアルティに転職し、投資部長や企画部長を歴任。2015年には福岡地所株式会社(出向)でビル事業部担当部長、執行役員、常務執行役員などを務め、2021年に福岡リアルティの取締役に就任。2024年5月に福岡リート投資法人の執行役員、同年6月福岡リアルティ代表取締役社長に就任し、現在に至る。
※所属や役職、記事内の内容は取材時点のものです。
パーパスを「行動」に落とし込む──バリュー「物件を愛す」が変えたもの。
社長就任以来、組織の土台づくりとして最も注力してきたのが、パーパス・ビジョン・ミッション・バリュー(PVMV)の策定と浸透です。
ただ単に標語を掲げるだけではなく、メンバーそれぞれがPVMVを自分の行動に落とし込み、日々の業務でどう体現するかが重要です。
その一例が、経営メンバーが合宿を重ねる中で自発的に生まれた「物件を愛す」というバリューです。
不動産金融という業態だからこそ、数字やデータだけで物件を語るのではなく、実際に足を運んで現場を「知る」ことが原点になるはず──そんな議論が自然と生まれました。
「物件を愛すとは何だろう」とみんなで考えた結果、たどり着いたのは「まず自分たちが物件に足を運び、よく知ること」でした。
投資部や運用部だけでなく、すべての部署のメンバーが実際に物件を見て、「私たちはこの物件を預かっている」と実感する。その積み重ねが、バリューの体現につながっていくはずです。
こうした取り組みの成果は、エンゲージメントサーベイの結果にも表れました。特に「この会社で働くことに誇りを持っている」というスコアが大きく改善し、全体としても前回の結果を大きく上回りました。
パーパスを定め、働く意味を言語化して共有し続けてきたことが、メンバーの意識を変える起点になったと感じています。
想いを語り続ける──PVMVを組織の文化へ。

私は月に一度、全社員に向けて30分ほど話す機会を設け、PVMVを策定した背景や趣旨を丁寧に伝えています。
パーパスにはどのような想いを込めたのか。それを踏まえたビジョンは何か。バリューを日々の行動にどう結びつけるのか。一つひとつを丁寧に分解し、繰り返し語っています。
同時に、日常業務の中でPVMVを体現している好事例を紹介しています。
大きなプロジェクトだけでなく、小さな行動であってもPVMVにリンクするものは積極的に取り上げる。そうした草の根の積み重ねが、組織への浸透を支えていると感じています。
当社は設立から20年以上が経ち、若いメンバーも増えてきました。創業期の想い──なぜこの会社が生まれ、何を守ろうとしてきたのか。その歴史を語り継ぐことにも、大きな意味があると考えています。
歴史の語り部と言うと大げさかもしれませんが、この会社のルーツを知ることで、今の仕事への向き合い方は変わるはずです。そう信じて、月に一度のこの場では折に触れて設立当初のエピソードも話すようにしています。
物件数の飛躍が拓く未来──「九州を動かす存在」への道筋。
私たち福岡リアルティは保有する資産規模の拡大を目指しており、運用資産を数倍の規模へと成長させていきたいと思っています。
この成長を具体的にイメージすると、将来的にはポートフォリオが100物件近くにまで拡大する計算になります。
九州で、商業施設、オフィスビル、物流施設、ホテルなど、多様なアセットタイプの物件を100件規模で保有する会社はほぼ存在しません。
そのこと自体が大きな価値となり、九州のあらゆる不動産情報が自然と集まる存在になるはずです。しかし、重要なのは単に物件数が増えることではありません。
商業施設もあればオフィスビルもある。物流施設もあればホテルもある。多様なアセットタイプが適切に運営されているからこそ、幅広い領域の情報が集まり、「福岡リアルティに相談する価値がある」という信頼につながるのです。
実際、キャナルシティ博多を保有していることで、大規模商業施設の所有・運営に関する相談が数多く寄せられています。
物件数とアセットタイプの多様性がさらに広がれば、「このタイプの物件であれば福岡リアルティは経験があるから、相談してみよう」という声は一層増えていくはずです。
今後の課題は、「成長を遂げた先に見える景色」をメンバーと共有し、そこに至るロードマップの解像度を高めていくことです。
中間地点ではどのようなアクションを取るのか。その段階を達成したら、次に何ができるようになるのか。段階的なステップを示すことで、メンバー一人ひとりが「自分は何をすべきか」を具体的に描けるようになる。それがさらなる共感と誇りにつながると確信しています。
ただし、こうしたビジョンをトップが一方的に語るだけでは、「社長が言っているだけだよね」で終わってしまいます。
メンバーと膝を突き合わせて議論し、方向性をともに固めていくプロセスが欠かせません。合宿やワークショップといった形式も含め、全員が当事者として関われる場をつくっていきます。
DXと組織改革──「前例踏襲」から変化を歓迎する組織へ。

組織改革は、率直に言えばまだ「3合目」の段階です。課題を見つけ続けながら山頂を目指すことが組織の成長につながります。
その意識をメンバー全体で共有できたことが、大きな一歩だと考えています。
DXの領域では、業務プロセスに対する考え方が根本から変わりました。以前は、「今のやり方に合わせてシステムをカスタマイズしてほしい」という発想が主流でした。
しかし、それではシステムがバージョンアップするたびに独自仕様が足かせとなり、対応できなくなる。いわばガラパゴス化です。
現在は、まず業務の目的を確認し、業務フローをゼロベースで見直し、最も効率的なプロセスを設計したうえでシステムを導入するという順番に変わりました。
DXの世界では当たり前のことかもしれませんが、「過去からこの方法だから」を理由にしない姿勢が根づき始めたことは、大きな変化です。
この意識の転換は、組織の価値観にも波及しています。過去のやり方を熟知していることだけが評価されるのではなく、問題提起をきちんとできる人が尊重される。そうした文化が少しずつ醸成されてきたと感じています。
エンゲージメントの観点で言えば、パーパスや働く意味といった「個人の意識」に関するスコアは着実に向上しています。
一方で、部門間の相互刺激や連携といった「組織としての力」には、まだ成長の余地があります。部門のサイロ化をさらに解消していくことが、次のステージへ進むための鍵になると考えています。
育てる土台づくり──「人事・DX部」が変えた構造。
以前は若い社員ほど辞めていく傾向がありました。年齢が若く、社歴の浅い人ほど定着しない。その背景には明確な構造がありました。
即戦力としてスキルの高い人材を採用する一方で、「できるだろう」と任せきりにしてしまう。十分なフォローがないまま現場に立ち、孤立し、やがて離れていく。そして欠員を埋めるためにまた採用する──そうした悪循環が続いていたのです。
だからこそ、採用だけでなく「育てる仕組み」を持たなければ、持続的な成長は望めない。その危機感がありました。そこで新たに設けたのが、人事と前述のDXの機能を統合した「人事・DX部」です。
育成プログラムの整備、入社後の定期的な1on1ミーティングの実施、DXを前提とした業務プロセスの見直しと仕組み化までを一体で設計しました。個人の力量に依存するのではなく、育てる構造、育つ構造へと転換したのです。
その結果、最近入社したメンバーを含め、定着率は着実に改善しています。仕組みとして伴走する体制が機能し始めていると感じています。
同時に採用方針も変わりました。以前はスキルを最重視していましたが、現在は「想い」を重視しています。PVMVが整理されて育成の土台が整ったことで、スキルが必ずしも必要条件ではなくなりました。
パーパスに共感し、地域に貢献したいという意思を持つ人が、成長できる環境が整いつつあると感じています。
一方で、変化に戸惑いを感じるメンバーもいるでしょう。しかし、過去の方法が常に最適とは限りません。次の段階へ進むための変化として理解してもらえるよう、丁寧に対話を重ねていくつもりです。
地元愛と挑戦心──誇れる未来をともに。

採用において求める人物像はシンプルで、「地元が好きな人」と「面白がれる人」です。
当社の原点は、「街の大切な資産やインフラは街の力で守る」という思想にあります。
街の大切な資産を地元の力で守り、さらに価値を高めていく。その担い手となるべく設立されたのが福岡リアルティであり、福岡リート投資法人です。
地元への愛着を持つ人に来てほしい。「福岡が好き」「九州に貢献したい」──そうした想いを自覚している方は、当社のパーパスと自然に重なるはずです。
そしてもう一つ、失敗を恐れず、小さなチャレンジを楽しめる人を求めています。アイデアを出すことが重視され、「まずやってみよう」と言える文化をつくりたい。
物件数の拡大に伴い、メディア的な役割やWebを通じた地域情報の発信など、新しい挑戦の種は尽きません。そうした取り組みを面白がれる感性を持った方と一緒に働きたいと考えています。
また仕事はより高度になり、大変さも増すでしょう。しかし、資産規模の拡大は会社の収益につながり、メンバーに対する報酬も当然増えていきます。
九州・福岡に良い影響を与えている実感と、それに見合う報酬。この両輪が揃ってこそ、メンバーの誇りはさらに高まっていくでしょう。
「うちの会社、いいよ」とメンバー自身が周囲に素直に薦めてくれるようになること。それがパーパス経営の一つの到達点です。
まだ道半ばではありますが、この会社をさらに良くしていくために、これからも走り続けます。