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福岡の街を面白く-原点を追求し、先駆者としてのミッションを遂行する。

福岡地所株式会社
常務執行役員 小原 千尚

更新日:2023年11月01日

千葉県出身/東京大学経済学部卒
1997年 株式会社日本興業銀行(現:株式会社みずほ銀行)入社
2004年 株式会社福岡リアルティ入社
2015年 福岡地所株式会社 ビル事業部 担当部長就任
2017年 執行役員就任
2020年 常務執行役員就任
※所属や役職、記事内の内容は取材時点のものです。

原点の追求とポートフォリオの再構築。

-前回のインタビュー(※)から2年半経ちました。コロナ禍も明け、いろいろな会社が事業編成を始めるなど、世の中が大きく動き始めています。その中で、貴社の現在地や事業の強化ポイントについてお聞かせいただけますか。

(※)ページ下部『関連インタビュー』参照

コロナ禍において実施した最初のポートフォリオの組み換えは、ホテルや商業施設などの、人流に左右されやすく収益の変動が大きい事業のウェイトを下げることでした。当時の福岡地所は、そういった事業が全体の半分以上を占めていたからです。

では、人の流れに左右されない、よりレジリエンスな有力なアセットタイプは何か。それは、物流施設と賃貸住宅である、という結論に至りました。現在はこの二つについて積極的に投資と開発を進めており、順調にポートフォリオの再構築が進んでいるところです。

それに加えて取り組んでいるのは、私たちの原点である『福岡の街を面白く』というミッションの具体化です。『面白く』するために大切なのは、人が住みやすいということと、仕事がちゃんとあって楽しく働けるということです。もともと福岡は衣・食・住が揃っていると言われ、住みやすさには定評があります。そこに加えて楽しく働くことができる仕事を作っていくためには、産業誘致が有効なのではないか、と考えています。

それは、世界最大の半導体受託製造企業であるTSMCの進出によって、熊本県の街に産業や仕事が生まれ、国内有数の半導体産業の集積地へと一気に変貌したのを目の当たりにしたことも影響しています。このことをきっかけに、私たちも自社の事業の範囲で、九州や福岡県の産業誘致や街づくりに何か一役買えないのかと検討したのです。

産学官連携のメインストリームで存在感を強める。

まず一つ目に導き出したのが、ライフサイエンス分野における可能性です。この分野の研究開発拠点として機能が揃ってくることで産業クラスターが形成されるのではと考え、現在は各方面への働きかけを積極的に行っています。

もう一つ大きな可能性を感じているのは、TSMCの進出などにより、近年、九州との関係が活発化しているアジアです。例えば、中国との関係によって国際金融都市としての機能が弱まりつつある香港に代わり、新たな国際金融都市を日本に作ろうという機運が高まっているのですが、そこで手を挙げたのが東京、大阪、そして福岡です。

ただ、福岡に国際金融都市的な機能を誘致するためには、やはり様々な外資系企業の進出が不可欠です。その実現を目指して2020年9月、産学官が一体となった国際金融機能誘致「TEAM FUKUOKA」が設立されました。福岡地所も幹事として設立当初から参画し、現在、外資系企業の誘致に向けた動きを活発化しています。

地域活性化のモデルケースを目指して。

-福岡地所が行う産業誘致とはどんな動きになるのでしょうか。

進出するメーカーのサポートを担当します。当然、これらの会社は主力メーカーの周辺に工場を建設する必要がありますので、そのための便利な土地の発見、土地の造成、建物の建設などを私たちが担うのです。北熊本のインターチェンジ近くの土地約5万坪を購入する計画で、そこに熊本エリアの半導体を中心とした産業用施設を誘致させることを考えています。

ちなみに、これまでのオフィスビルへの企業誘致の際は、総務部門やファシリティ部門にアプローチしてきましたが、産業誘致においては製造部門や開発部門とのコミュニケーションが増えています。こうして、私たちのお客様に対するアプローチの幅も広がっています。

その他にも、工場だけでなく「知の拠点」の進出も支援できればと考えています。研究室や研究・開発施設などがそれに該当しますが、このような研究開発活動にとって重要なのは、優秀な人材をどれだけ集めるかです。若い才能が集まり、さらに海外からもアクセスしやすい場所といえば、九州であれば福岡が最適だと考えています。

日本全体で人口減少が進む中、こうした集中投資を行う都市はますます人口が増加し、活気づいていくことが期待されます。福岡の取り組みが、将来的に地域活性化のモデルケースとなることを願っています。

確実に前進する大規模再開発プロジェクト。

-現在、福岡で進行中の再開発プロジェクトについてお聞かせいただけますか。

現在、福岡では『天神ビッグバン』『博多コネクティッド』そして『福岡アイランドシティ』の三つの大規模プロジェクトが進行中です。建築費高騰や金利上昇といった影響はあるものの、私たちを含む開発に携わる民間企業は、こうした環境下でもプロジェクトを確実に前進させているという印象を受けています。

また、福岡市が試算した経済効果も着実に具現化されていると感じています。例えば、世界と福岡を結ぶ先進的な物流拠点と未来都市の機能を備えた『福岡アイランドシティ』。ここは物流エリアが中心で、埋め立てや造成の完了後は民間に移譲されているのですが、その売買金額は見込み額を上回っています。これは市としての開発計画が大成功したことを示しています。

最初に、コロナ後の安定したレジリエントなアセットタイプとして物流施設を挙げましたが、その物流施設が主要な要素である『福岡アイランドシティ』では、建築費の上昇分を家賃の上昇で補完できています。『天神ビッグバン』と『博多コネクティッド』についても、先ほど述べた通り、建築費など様々なリスク要因は存在しますが、建設工事は着実に進行しています。3~4年後には、街並みが大きく変わるだろうと予想しています。

ハードとソフトの充実で、働く人たちが訪れたくなるオフィスを提供する。

-グローバルで見ると、働く人のオフィスへの回帰が遅れていると聞きます。その点について福岡ではどのような状況でしょうか。

この点について、私たちも多少なりとも戦略を転換しています。コロナ前までのオフィス市場は非常に順調でした。というのも、需要が非常に旺盛な状況でしたので、オフィスビルを建設すれば比較的容易にテナント誘致が可能だろうと見込んでいたからです。

しかし、コロナ禍が到来し、リモートワークが世界的なトレンドとなりました。福岡は他の大都市ほどではなかったものの、この数年間でリモートワークが一般的な働き方として浸透し、コロナ禍が収束しても定着している感があります。そのため、過去のようなオフィスへの通勤が当たり前という時代には戻らないと見るべきでしょう。

一方で、人と人とが対面してコミュニケーションすることで初めて生まれるセレンディピティ、つまり偶然の出会いやそこで生まれるアイディアの重要性を再認識することもできました。このような要因から、私たちは働く人たちが訪れたくなるオフィスを提供する必要があると考えています。

今後は、単にオフィススペースを提供すれば十分というわけではありません。オフィスビルの差別化には物理的なインフラだけでなく、提供されるサービスや環境の質も含まれると信じています。現在、私たちはハードとソフトの両面を強化するため、ロンドンのオフィスを視察したり、シェアオフィスやコワーキングスペースを参考にし、現代のオフィスニーズに適した施設を模索しています。

福岡の街をさらに魅力的にしていく先駆者として。

-今後の事業成長を実現させていく上での人材採用についてもお伺いできますか。

人材採用については非常に力を入れています。昨年、平均年収を15%ほど引き上げ、より採用競争力を持つようにしました。一方で、採用プロセスを進める中で、働きがいや働くことの意味について、私たち自身が問われることが増えているように感じます。そのため、私たちのミッションである『福岡の街を面白く』に再び焦点を当て、アウトプットしていく必要があるとも感じています。

このミッションを実現するうえで、福岡の街には「暮らしやすさ」と「仕事」という二本柱が必要であるとお伝えしましたが、コロナ禍を経て、より「暮らしやすさ」が重視されるようになったと感じます。私自身、福岡に住んでいて思うのは、福岡は豊かな自然に囲まれ、美味しい食事を楽しむことができ、交通アクセスも便利な魅力的な街であるということ。この「暮らしやすさ」は世界的にも高く評価されており、大いにチャンスがあると感じています。

そんな福岡にあって、福岡地所で働く魅力は、この街を変えていく先駆者として活動できる点でしょう。新しいアイディアや面白い取り組みが街にプラスの影響を与える可能性があるなら、積極的に試みていこうと思う人々が集まる場所として、私たちを捉えていただけたら嬉しいです。それぞれが考え、行動し、この街をさらに魅力的にしていく共同体を築いていきたいと思います。

編集後記

コンサルタント
植田 将嗣

2年半ぶりとなった小原常務へのインタビュー。着々と進む福岡の3大プロジェクト、天神ビッグバン・博多コネクティッド・福岡アイランドシティについて、そして福岡地所が新たな領域で取り組むプロジェクトについてお話を伺いました。

福岡に住んでいる方や福岡を訪れる方は、街がどんどん変わっているのを感じていると思いますが、そのプロジェクトの“ど真ん中”に関わっておられる常務のお話は、さらなる街の変化をより明確に想像させるものでした。

これらのプロジェクトを加速度的に進めていく上で、優秀な人材が欠かせないと力強くおっしゃる常務。実際に、同社では人材採用を見据えて給与制度の見直しを行うなど、世の中の一歩先を進む取り組みに注力されています。

「福岡の街を面白く」するためには、「楽しく働ける仕事」が不可欠である。そして何より、自分たち自身がそれを体現していることが重要である。そんな常務の想いが強く伝わる時間となりました。

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